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標準治療を選んだワケ~乳ガン治療記34

タイトルはこんな感じですが、実際には迷わず標準治療を受け入れた私です。

とは言え、若い頃は結構近藤誠先生に感化されて「ガンになったら諦める」と言っていたんですよね。例の「転移するガンは治らない。転移しないガンはがんもどき」という理論に納得していた時期があったんです。

近藤誠先生が「患者よ、がんと闘うな」を上梓されたのが1995年でしたっけ。私の母が胃がんで亡くなったのが93年です。母は当時の風潮と、父の強い意向により、告知されることなく消化器を大胆に切除され、抗がん剤で脱毛したり強い副作用に苦しんだりしながら、1年以上、見るからにつらい闘病生活の末亡くなりました。そんな母の闘病を見た直後くらいに読んだので、ものすごく刺さったのだと思います。

私の中では、「抗がん剤→副作用が強くてQOLが下がる。抗がん剤でガンは消えない」「手術→切っても全部取りきれるわけではないからそれで治ることはない」みたいな図式ができてしまい、当時は本気で、「ガンになったらあきらめる。ガンもどきなら放置しても大丈夫だし」と思ってました。まぁ、あの頃は子供もいなかったので。

その頃夫と話したときには「そんなこと言っても、実際になったらまたわからんよ」とは言われていました。

そして、あれから約30年が経ち、実際自分がガンを宣告されたときにどうしたか。

私のガンは「トリプルネガティブ」で、治療法は手術のほか抗がん剤一択。6ヶ月前には影も形もなかったのが(いや、影くらいはあったのかも?)、立派な腫瘤になったくらいに進行が早く、顔つきは悪い。

うーん、近藤先生の理論を見ても、『ガンもどき』の可能性はほぼゼロ。

だったら、ここで諦める? いや、さすがにそれは選択肢にありませんでした。というか、治療しても再発転移したりして結果的に寿命はそれほど長くないかもしれない。それでも、「何もしなかった」というのは夫や息子に申し訳ないな、という気持ちが先に立ちました。進行の速さを考えても、何もしなかったらあっという間に手遅れになりそうでしたし。

何より、民間療法(オンリー)を選ぶほど、経済的余裕はありません。標準治療であれば、自己負担はそれほど多くないし、保険でかなりカバーできます。

そして、調べてみれば、トリプルネガティブの場合、術前化学療法で抗がん剤が効けば、そこそこ高確率で完全奏効(画像検査等でガンが確認できない状態)が得られるという話。そして、画像上だけでなく病理学的完全奏効(手術で切除した標本にがん細胞が残っていないこと)を達成している場合は予後がかなり良いとのこと。これは近藤先生の話と随分違う。

もちろん、抗がん剤が効かなくてそうならない場合も少なくはない。とは言え、効く可能性があるのなら、試してみる価値はあると思いました。

思えば、30年前には、乳ガンのサブタイプ分類というのはなかったようです。今調べたところ、こういう分け方をするようになったのは2009年から。21世紀になってからなのですね。

昔は私のように腫瘤がそれほど大きくないのに術前化学療法をすることなどなかったように思います。術前化学療法は、腫瘤が大きくてそのままでは手術できない場合に、先に小さくしてから切るのが目的だったような。

トリプルネガティブに対する術前化学療法は、それこそ、見えない転移がすでに起こっている前提で、先にその芽を摘むのが目的かと思われます。もちろん、腫瘤もできれば消してしまいたいですし。

私の主治医の先生は、化学療法は術前術後どちらでも良いとおっしゃいましたが、私は上記の考えに合理性を感じたので、術前を選びました。現時点で、右胸のしこりは触ってもまったくわからない程度になっています。画像診断していないので実際どうかはわかりませんが、抗がん剤が効いていることは確かです。

しかも、前半はほとんど副作用らしい副作用はなくて、元気に過ごしていましたから。

後半になって、多少不都合が出てきて、やはり抗がん剤は毒なのだと実感していますが、K医師のアドバイスで薬に負けないよういろいろケアしているためか、仕事を含めて、なんとか普通の生活を続けています。爪の状態は良くないですが、顔周りの皮膚の状態はむしろガンになる前より良いくらい。たぶん、以前はビタミン・ミネラル等足りてなかったんでしょう。

まだしばらく、抗がん剤治療は続くのですが、できれば完全奏効を達成して、手術で原発巣を取ってもらって、再発を防げたら良いなと思っています。

とは言え、いずれ再発する可能性は常にあるので、今回の治療が全部終わったら、命の猶予をもらったと思って有意義に過ごしていきたいですね。何しろ、放置していたらたぶん1年以内に命が危なかったと思うので…。

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