感想を書く時間が取れずに読むのだけは先走ってしまったので、第2部の後半はまとめて書いてしまいます。
第9巻「邂逅の珊瑚」
あらすじ
滞在していたスリランカでの戒厳令発令をうけ、日本に一時帰国することになった見習い宝石商の中田正義だが、
帰国前にある人物からのメールを受け取っていた。
メールの差出人は、連絡が取れずにいたヴィンセント。文面は「話をしましょう」。
戒厳令下の慌ただしい中でやりとりをすると、それはヴィンセントのアカウントを乗っ取った別人からのメッセージだった。
その人物の要望もあり、正義は日本滞在もそこそこに、ヴィンセントに会うために香港へと飛んだ。
かつてリチャードを裏切っていたはずなのに、なぜか正義を助けてくれるヴィンセントの真意とは?
そして、リチャードと再会した正義が思うこととは……?
感想
前巻がヴィンセントからの呼び出しで終わっていたので「どうなった?」と気になって読み始めたのですが、思わぬ展開になっていました。
戒厳令下のスリランカを出て、東京、アメリカ、岡山、香港とそこらじゅうを飛び回る正義。なんとも慌ただしい巻でした。
びっくりしたのは、前巻ではまだ辿々しかったはずのフランス語がかなりできるようになっていたらしいこと。まぁ、小説の中の話ではありますが、マルチリンガルになりつつあるのは羨ましいと言うか、すごいなぁ、と思ってしまいます。その年代の頃、そうなりたかったけれどなれなかった自分を思い出します。ちなみにこの巻の時点ではまだ中国語は全然…、のようですが。第1部最終巻の「extra case」ではもっと使える言語が増えていたし、飼い犬も2匹になっていたので、あれはまだ先の話のようです。
いろいろな人物の思惑が交錯する巻で、肝心のリチャード氏がなかなか出てこなくてちょっとフラストレーションを感じました。
最終的には二人の話で終わるわけですが、まだまだ二人の関係は「ブロマンス」から出ていないようでいて、実はもう少し進展しているような気も…。でも、上に書いた第1部最終巻の「extra case」の時点で、二人は同性カップルではないと言っているしね。
あと、この巻で語られるシャウルさんの宗教遍歴がびっくりなのですが、その宗教の話も含めて、自分の生きている世界は本当に狭いなと実感してしまう巻でした。
第10巻 久遠の琥珀
あらすじ
何度もリチャードを妨害してきた富豪の少女オクタヴィアに、スリランカ随一の山岳リゾート地ヌワラエリヤのホテルへと呼び出された正義とリチャード。
そこで待っていたのは、オクタヴィア本人とヴィンセントだった。
ジェフリーとヘンリーも合流し、一行はオクタヴィアとコミュニケーションをはかろうと力を尽くす。
オクタヴィア・マナーランド、十七歳。彼女がリチャードを妨害していた真意は何だったのか。
クレアモント家執事室との関係は? そして、正義とリチャード、ふたりの関係の行方は?さまざまな答えが明かされる、大人気ジュエル・ミステリー、第二部完結編!
感想
オクタヴィアとの対決と、ついでにクレアモント伯爵家のお家騒動の決着も見られた、第2部の完結巻でした。
結局のところ、クレアモント伯爵家の行く末を案じた執事室がオクタヴィアを利用した、ってことなんでしょうが。
まぁ、私はもう年寄りなので、執事室の人たちの気持ちはわからないでもないです。跡継ぎがいなくてお先真っ暗ですもんね。でもって、日本の皇室もそうだけれど、こういう名家の場合はやはり政略結婚ありきではないかと思うこともあります。少し前までは当たり前の感覚でしたよね。
必ずしも、恋愛結婚が良いわけじゃない。
結婚は家を、血筋を繋いでいくもの、と割り切っての政略結婚に、本人が納得するのであれば、実はそれが一番平和ではないかと思ってしまいます。
ただ、今の時代なかなかそうはいかないですよね。ひょっとしたら本人たちは納得していても、逆に周りが納得しないとか。
いや、名家に生まれるって、いろいろ不自由だなと思ってしまいます。
このお話の登場人物たちもそう。できることなら、クレアモント家の使用人のみなさんも含めて、みんなが納得できる良い落とし所が見つかると良いと思います。とりあえずはオクタヴィアの処遇で一時的には解決しそうですが。
さて、この巻の終わりの方でようやく、飼い犬が二匹になりました。つまり、例のextra caseはこの話の後ってことなんでしょう。
そして、最後はこの二人の関係にまた一区切りがつきました。恋愛なのかそうでないのか、という意味では曖昧なままですが、公私ともに「パートナー」となることは確定みたいです。BLは苦手な私ですが、読んでいて、性別は関係なくなってきますね、この話。セクシャルな話が一切ないせいかもしれません。こんな感じで続いていったら良いなと思える決着でした。


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