昨夜は久々のサントリーホールへ、コンサート形式の「ランメルモールのルチア」を聴きに参りました。
タイトルロールは当代最高のルチア歌いと名高いナタリー・デセイ。
私が初めてデセイを知ったのは、なんと昨年です。METのライブビューイングでの「ルチア」を観たのが最初でした。
衝撃でしたね。
歌はもちろんすごいのですが、その演技に特に引き込まれてしまって。
ルチアは難曲ぞろいなのに、その難しさを感じさせないくらいの自然な歌唱と、魂のこもった演技でした。
それで一気にファンになりました。
今年も夏前にMETライブビューイングの「椿姫」を観て、このときは体調が悪かったみたいで歌の方は彼女的に今一つだったようですが、それを補って余りある迫真の演技で、最後は涙を抑えきれませんでした。
そんなデセイが日本でルチアを歌ってくれる、と知った時、もちろん「行きたい」と思いましたが、チケットの価格を見て最初は「無理」と諦めかけました。
が、夫が「オレが半分以上出すから行こうよ」と言って背中を押してくれたので、チケットを買うことができました。感謝です。
さて昨夜のルチア。
席は二階左サイド。
最初は聞こえ方がどうかな?、と思いましたが、いい感じに音が回ってきて良かったです。思ったよりステージも近かったし、ルチアとエドガルドやエンリーコとの掛け合いではちょうどデセイの顔がこちらを向くことになり、表情も良く見えました。
そして、やっぱりデセイは素晴らしかったです。
コンサート形式なので衣装も演技的な絡みもないので純粋に歌を聴くわけですが。
やはりナマの声は録音とは全然違うのでした。
いや、聞こえる音色は変わらないのですが、たぶん録音できない部分がたくさんあるのでしょうね。
たとえ衣装を着ていなくても、魂のこもった歌は鳥肌モノでした。
ダイナミックレンジの広さは想像以上。繊細なppから、あの細い体のどこにそんなパワーが?、と思わせる迫力のffまで、堪能させていただきました。
有名な「狂乱」の場では珍しいグラスハーモニカとの競演も楽しめました。
グラスハーモニカの方、掛け合いではデセイに煽られてちょっと大変そうでしたが、幻想的な音色があの場面によく合っていたと思います。
個人的には一幕のアリアの方が好きなのですが、こちらも圧巻でした。
デセイのアリアの後は、ステージ上の人たちまで控えめに拍手してましたね。
コンサート形式って、普通のオペラと違って舞台に出ずっぱりなので、コンディションを保つのが大変だと思います。
あれだけの量を歌うのに、水一滴飲まずに歌いきるのもすごいな、と変なところにも感心してしまいました(急きょキャスティングされたエドガルド役の方は水を持ち込んで飲んでいらっしゃいましたが)。
新国立の合唱団の皆さんも、特に女声は開演から1時間近く歌わずにステージ上で座っていて、でも出番になったらあれだけきっちり歌えるあたり、さすがプロ、と思いました。あれ、ホントに辛いんですよね。ステージ上は暑いし乾燥するし。
オーケストラ、ソリスト、合唱、どれも素晴らしく、本当に贅沢で幸せな夜でした。
とにかく、デセイの歌を現役のうちにナマで聴く機会を得られただけでも本当に嬉しかった。改めて夫に感謝です。
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