台北を出たバスは、一路九份(きゅうふん)に向かいました。
結構な山道を登っていった上に、観光客や観光バスがたくさんいて、バスの駐停車もままならないような状況でした。
私たちも少し離れたところで降ろされ、昼食会場のレストランまで少し歩きました。
九份は「千と千尋の神隠し」のモデルになったというお店のある場所とのことですが、とにかく坂や階段の多いところでした。「これからたくさん歩きます」ということで、行く前から少々げんなりしていた感じは否めません。
レストランでは丸テーブルに何組かが相席になり(これは適当にガイドさんに決められました)、中華のコースらしき料理がどんどん乗せられていきました。
このお料理は…正直あまり口に合いませんでした。それこそ大昔(50年以上前)に父に連れられて香港に行ったとき、当時は子供だったこともあって、食べるものがなくて困ったことを思い出しました。どうも、いわゆる「本場の」地元の中華料理は食べ慣れないせいもあって美味しく感じられないようです。
食事が終わる頃にトイレに行ったのですが、席に戻るともう誰もいなくて、私たちのグループは外に出ていっていました。そのせいもあって、かなり慌てて席を離れました。すると、移動している最中に、どうもバッグが軽いような気がして、中を確認すると、スマホが入っていません…。肩にもかかっていないし、これは、レストランに忘れたようです。
でも、団体はどんどん先に進んでしまいます。
夫が「ガイドさんに言わなきゃ」と、急な階段なのに人波をかき分けるように急いで前の方に向かっていきました。階段を上がりきったところで、さらに前に出ようとして、バランスを崩しました。体勢を立て直す間もなく前のめりに転倒した夫に、周囲は大騒ぎになりました。
ガイドさんが気づいて前の方から移動してきて、すぐに様子を見てくれました。夫は顔と左手から出血していて、キズもそこそこ深そうでした。周囲の人が次々に、ティッシュペーパーや絆創膏を渡してくれました。私もどうしていいかわからずパニックになってしまい、とりあえず出血箇所をティッシュで押さえて、手の方は持っていたペットボトルの水で軽く流してから絆創膏を貼りました。
私たちのグループは別のガイドさんが引き継いで観光を継続することになりましたが、私たちはそのまま、現地ガイドグループが用意している予備の車で基隆に戻ることになりました。旅行会社の添乗員さんと、現地の別のガイドさんが同行してくれました。この時点で、私たちの台湾観光は終了となってしまいました。
なお、私のスマホは次のグループ(同じツアー)の人が見つけてくれて、無事旅行会社の添乗員さん経由で手元に戻ってきました。
そもそも私がスマホを忘れなければ、この事故はなかったので、夫には本当に申し訳なく思いました。このまま旅行が継続できなくなったら残念だし申し訳ないし、と、車の中でも気持ちが沈んでいました。
途中、台湾の新幹線とすれ違ったりしたのですが、車窓を楽しむ余裕はほとんどありませんでした。
それにしても、団体ツアーで一斉に移動するのでなければ、怪我もしなかったかもしれませんが、結果的に事故があった時には、旅行会社の存在は本当に心強かったです。船まで送ってもらえたのはもちろん、船に戻った時の動きとか、保険会社との最初の交渉とか、全部やってもらえましたので。万一自分たちだけの旅行で事故にあっていたら、どうしていいか途方に暮れていたと思います。
船に戻ると、すでに別のスタッフ(旅行会社の人)が車椅子を用意して待っていてくれ、看護師の資格を持っているという別のスタッフが、メディカルセンターの中までずっと付き添ってくれて、私では理解の足りない部分を補ってくれました。とりあえず、そこで飛び交う英語はだいたいわかったのですが、一部医療用語は難しかったので。
夫は頭を打っていると自己申告していましたが、ドクターの判断ではCTを撮るほどではないとのことで、外傷の治療と破傷風の予防注射だけして帰されました。旅行会社の方(看護師資格を持った方)は、「24時間はなるべく安静にしたほうがいいので、今日の夕食や明日の観光は、様子を見ながら慎重に」と言っていました。
この時点では、まだ夫はあちこち痛いのが勝っていて、残り2日はただ自室で過ごして終わってしまうのかな、と思っていました。



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