ここのところ毎年恒例になっている、「昭和音大オペラ」を観てきました。
今年はモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』でした。
学生オペラは毎年、行けるところはなるべく行くようにしていて、中でも昭和音大は駅チカでアクセスが良いこと、大学のホールですがオペラに特化した素晴らしいホールであること、時期が良いことなど、条件が揃っているのでほぼ毎年行っています。衣装もセットも結構凝っていて、それでいて学生さん中心の舞台ということで格安なのが嬉しいです。
ただ、今年はこのコロナ禍ですので、正直あるとは思っていませんでした。
ところが、ちょうどいつもの時期に差し掛かったことに気づいたので、念の為調べてみたら、なんと例年通り開催するというではありませんか。なので、早速チケットを入手して行くことにしたわけです。
とは言え、まだまだ入場規制、ソーシャルディスタンス等が求められる昨今、どのような形で開催されるのか、不安半分ででかけました。
ホールに入って最初に目についたのはオーケストラの座席。いつもはオーケストラピット(オケピ)に押し込まれているところですが、今回はステージ中央。しかもそれぞれの席が少し離れています。
そして、いつもオケピがある場所はステージが設営されています。オケの後ろにも、奥行きが少なく狭いですが、一段高いステージがあるようです。
やはり、狭いオケピではソーシャルディスタンスが保てないということなんでしょう。
歌手用のステージが前にせり出していることもあってか、そこから3列くらいは空席になっているようでした。
そして、始まってみて驚いたことに、歌手の皆さんは全員フェイスシールドを着用していました。
歌う際にも決して接触せず、ある程度以上は近寄りません。最初のドンナ・アンナの父が死ぬシーンでも、アンナ役の方はかなり遠くで歌っていました。字幕で「あぁもう虫の息だわ」みたいに出るのですが、そんなに遠くちゃわからないよね、って感じ。
もちろんラブシーンも離れたまま。2幕のツェルリーナのアリア「恋人よこの薬で」なんかは、本来マゼットの手を取って自分の胸に当てて「触ってみて。鼓動を感じるでしょう」みたいに歌うのですが、やはり手を取ることすらしません。
また、フェイスシールド越しの歌唱は、やはり声が飛びにくいのでしょう。席が遠かったこともあり、なかなかに消化不良でした。
合唱の皆さんに至っては、オーケストラ奥の狭いステージに追いやられ、しかも紗幕越しに歌うという状況(もちろんフェイスシールド付きです)。正直、声もよく聞こえませんが、姿もよく見えませんでした。
事情はわかります。わかりますが、やっぱり残念です。芝居に制約が多すぎます。
演出面では、その紗幕に映像を投影していました。最初は大道具・セットの代わりなのかと思いきや、演者は静止しているのに映像だけがどんどん動いていったり、縮尺がおかしかったり、あまり意味がない気がしました。特に、その紗幕の向こうに人がいて演じているときは、人が見えづらくてむしろ邪魔。必要最小限(ドン・ジョヴァンニの最期の場面の業火の表現等)に留めておいてほしかったと思いました。
とは言え、観客を入れて(結構入っていました)オペラを開催した、ということに意義があると思いますし、その点は頑張ったなとは思います。ライブでオペラを観るのも久しぶりでしたので、やってくれたことには感謝しています。
できることなら、早くもっと、制約のない普通の舞台ができるようになってほしいものだと切実に思いました。
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